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2007年1月19日 (金)

サルとすし職人

著者: フランス・ド・ヴァール西田利貞

出版社: 原書房

 読了直前だけど、面白い。動物行動学の「いま」の状況がとても具体的にかつ分かりやすい言葉で語られる。竹内某さんのように自分の思い付きをタレ流すでもなく、熱意をこめてこの分野の面白さを示しつつ、考察には抑制を欠かさない態度。に好感。
そしてなにより、このテーマを追う玉石混交の研究者とその歴史についてようやっと見通しの良いパースペクティブが示された気がする。とりわけ今西錦司の立ち位置については長いことと私もどう捉えたものかよく分からなかったのだが、だいぶ府に落ちた。簡単に言うとサル(社会)学のパイオニアとしてとくにその研究手法の確立に偉大な足跡を残す一方、進化論に手を出したのはやはりやりすぎたんだろう。(簡単に言い過ぎ?)今西進化論の暴走ぶりが、サル学における画期的な業績に対してもいまひとつ冷淡にあしらわれる傾向を呼んだ、と著者は考えているようだ。と同時にいろんなところにケンカを売りまくっていたりして、なかなか好戦的。ドーキンスやリドレーなんかもかなり叩かれてるよ。

ところでおれたちの世代はロクにモダニズムも勉強しないうちに嵐のようなポストモダンの洗礼を受けてしまった。もう今西錦司ってなんだか西洋パラダイムにたいして乾坤の一撃を打ち込んだ同胞の哲人みたいに祀り上げられてたりして。「棲み分け」「食い分け」とかなんてこたない話がさも研ぎ澄まされた洞察力によって喝破されたかのごとく教科書に記載され、学校でも教わってきたわけだ。でまた御大は哲学方面に寄った本をたくさん書いてるそうだし、この何とはなしにうす甘い共同体幻想をよびそうな個体群モデルが社会科学系の人の琴線に触れたのか、なんか社会の先生とか、小学校の先生とかもこういうの大好きだったような気がする。ィヌエチケイとかも好きだよね。

それでなんとはなしにそういうものかと思ってぼくらは大きくなったんだけど、やっぱりものには順序ってものがあって、ポストモダンを論ずるならその前にモダニズムをある程度勉強してみなきゃ話にならない。その辺の基礎工事をなおざりにしていきなりコドモにポストモダンの視点を吹いちゃうから脆弱なんだ。アカデミズムと教育がいちいちそのときどきの社会思想の波をかぶってちゃあ駄目だよなあ。

といったかんじでぼくらの世界認識の中ですっ飛ばされてきた部分が、少しだけ俯瞰できた本だ。

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